HEROs AWARD 2022
益子 直美
PROJECT OVERVIEW
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監督が怒ってはいけない大会では「監督が怒ってはいけない」ことをルールとしたバレーボール大会をこれまでに福岡、藤沢(神奈川)、秋田、山口の各地で開催している。
10年前、部活動現場で、誤った指導により高校生が自死を選ぶ事件が起こってしまった。今でも子どもたちを取り巻くスポーツ現場では、勝利至上主義からくる怒る指導や体罰が問題となっている。益子氏自身も勝利至上主義により競技を楽しめずストレス疾患を抱えるなど辛い経験をしてきた。 その経験から、勝利至上主義の「怒る指導」は心の成長を阻止し、考える機会を奪うものであるとし、スポーツを「楽しいと思えて、自ら考え行動でき、継続できるような環境」にするために、プロジェクトを進めている。第1回大会が開催された福岡大会では開催するごとに参加チームが増え、最大50チームが参加するほどの規模となった。大会では試合の他に、子どもと指導者、保護者を一同に集めて行う、アンガーマネジメントやペップトーク、スポーツマンシップに関するセミナーや、子どもたちが純粋に楽しむ時間としてのクイズ大会なども実施している。また、大会中もっとも笑顔だった選手と監督には「スマイル賞」を授与することや怒ってしまった監督には「×印」のマスクをつけるなどの工夫もされている。 2022年に秋田で初めて「監督が怒ってはいけないサッカー大会」が開催されているほか、バスケやラグビーなど、他競技から大会開催の相談が寄せられており、スポーツ界全体に広まっている。 |
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受賞部門 |
アスリート部門 |
プロジェクト名 |
監督が怒ってはいけない大会 |
取り組む社会課題 |
子どもたちの心の成長 |
目標/ミッション |
勝ち負けではなく「子どもたちが楽しくのびのびとプレーすること」 |
活動開始時期 |
2015年1月~(2021年4月に一般社団法人設立) |
WEBサイト |
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審査員・アンバサダーコメント
井上康生
柔道家/東海大学 スポーツプロモーションセンター教授
スポーツは多様な価値を受け入れ、育む大変魅力なものです。しかしながら一部のいき過ぎた勝利至上主義によって、それらが損なわれている面があるのも事実です。そんな中、益子直美氏は3つの理念「楽しむ!」「怒らない!」「チャレンジ!」をもとに「監督が怒ってはいけない大会」を主催し、勝ち負けではなく、楽しくのびのびとプレーすることで子どもたちの自立心や主体性を育み、非認知能力の向上を高め、人と人との繋がりの重要性を伝えつづけています。それは、人が生きてくために必要とされる総合的な力の醸成にもつながっていると言えるでしょう。
また、「監督が怒ってはいけない大会」の開催そのものが、指導者や保護者が日ごろの取り組みを振り返り、未来への気づきと学びを得るきっかけとなっているのも特筆すべきことです。このことは「自己成長と社会還元」の機会の提供であると同時にスポーツの究極の目的であり、存在価値であると言えるからです。益子氏はその点においても優れた教育者であり、人々に夢と希望を届ける素晴らしいリーダーであります。今後の更なるご活躍を心からお祈りいたします。このたびはHEROs AWARD 2022受賞、おめでとうございました。
受賞者コメント
益子 直美
この度はHEROsAWARDに選出して頂き誠にありがとうございます。スタッフ共々びっくりしております。活動を始めてもうすぐ9年目。監督が怒ってはいけない大会を始めた当初は誰にも言えず、こっそりと開催しておりました。
まだまだバレー界では怒る指導が当たり前で、SNSで発信すると、“益子もそうやって成長したんだろ”“恩師を批判、否定するのか”というメッセージがたくさん届き心折れそうな時もありましたが、ただただ子供達がバレーを、スポーツを楽しめるように、続けられるようにという一心で仲間と共に続けてきました。
今回の受賞でたくさんの方に応援して頂いている、と勇気と希望をいただき、そしてまた、多くの方にこの活動を知っていただける機会となり、本当に感謝しております。
大会自体も回を重ねるごとにアップデートをして進化しています。今は選手、指導者、保護者さん全員参加のスポーツマンシップメインのセミナーを開催したり、指導者さんにはアンガーマネジメントのセミナーを取り入れたりしております。
そして大会後の、怒りを使わないチャレンジをしてくれた指導者さんへの感謝とフォローアップが、次につながる進化に繋がっています。
現在は福岡の他に藤沢、山口、秋田、高知、佐賀で開催。他競技では秋田にてサッカーも開催することができました。さらに他競技にも広げていければと思っています。賛同協力してくださるアスリートのみなさんにぜひご協力いただきたいです。
スポーツは楽しいもの、強制されてやるものではない、スポーツは命を奪うものではない、とスポーツの素晴らしさをさらに伝える活動をしていきたいと思っております。そして、いつの日か、監督が怒ってはいけない大会はもういらない、益子直美の役割はもう終わった、もう必要ない、と言われる日が来ることを目標に、子どもたちの笑顔を守るために、この活動を広めていきたいと思っております。
この度は本当にありがとうございました。
益子直美
まだまだバレー界では怒る指導が当たり前で、SNSで発信すると、“益子もそうやって成長したんだろ”“恩師を批判、否定するのか”というメッセージがたくさん届き心折れそうな時もありましたが、ただただ子供達がバレーを、スポーツを楽しめるように、続けられるようにという一心で仲間と共に続けてきました。
今回の受賞でたくさんの方に応援して頂いている、と勇気と希望をいただき、そしてまた、多くの方にこの活動を知っていただける機会となり、本当に感謝しております。
大会自体も回を重ねるごとにアップデートをして進化しています。今は選手、指導者、保護者さん全員参加のスポーツマンシップメインのセミナーを開催したり、指導者さんにはアンガーマネジメントのセミナーを取り入れたりしております。
そして大会後の、怒りを使わないチャレンジをしてくれた指導者さんへの感謝とフォローアップが、次につながる進化に繋がっています。
現在は福岡の他に藤沢、山口、秋田、高知、佐賀で開催。他競技では秋田にてサッカーも開催することができました。さらに他競技にも広げていければと思っています。賛同協力してくださるアスリートのみなさんにぜひご協力いただきたいです。
スポーツは楽しいもの、強制されてやるものではない、スポーツは命を奪うものではない、とスポーツの素晴らしさをさらに伝える活動をしていきたいと思っております。そして、いつの日か、監督が怒ってはいけない大会はもういらない、益子直美の役割はもう終わった、もう必要ない、と言われる日が来ることを目標に、子どもたちの笑顔を守るために、この活動を広めていきたいと思っております。
この度は本当にありがとうございました。
益子直美
(1)キャリアの観点
ご自身は、Teachingと上下関係によるチームビルディングで絶大な実績を誇ってきたバレーボール競技のど真ん中で育成されていながらも、その手法とは真逆の発想で行動を起こしたことに大きな意義があります。自らを客観視し、過去の自分と自分の体験を批判の対象とすることで、様々な矛盾と対峙しながらも、自分なりの回答(意思)を発見し、実際に行動を起こしたことは、まさに体験学習モデル(D.Kolb提唱)の体現であったといえます。
競技における様々な体験から、じっくり自分と向き合い、内省を深め、考察し、実際に行動を起こしたという一連のプロセスは、競技スポーツ体験の何たるか?を考えさせられるケースであるといえます。競技体験をどのように振り返るか?で自分の生き方は大きく変わっていくことを実証したことになり、ファーストキャリアの在り方について改めて考えさせられるケースではないかと感じます。
一方で現役時代「自分で考える」ことはあまりしていなかった、或いは「常に自分に否定的であった」というご自身のコメントがありますが、今回はまさに「自分で考え実際に新しいコトを起こした」ことを踏まえると、ご自身が知らない間に現役時代のバレーボール競技活動体験の中で密かに何らかの形で「自分で考え 行動を起こす」素養が構築されていた可能性もあるのではないか?と更なる探求の余地を感じます。
(2)活動内容の観点
以下大きく3点が上げられます。
・スポーツを通じた運動有能感や自己肯定感向上に繋がる可能性を有していること
・親、指導者や競技団体職員の指導意識の改革、指導知識の改編への可能性を有していること
・意識改革の進まない業界内(特に小学生バレーボール)において、実践ベース(研修や講演活動ではなく指導現場そのもの)で切り込んでいったこと