F1ドライバーとして活躍し、現在はインディカー・シリーズ(IndyCar Series)に参戦し、
世界三大レースといわれるインディ500にて二度の優勝を果たすなど、日本を代表するレーシングドライバーの佐藤琢磨選手。

活動拠点を海外に置き、トップアスリートとして多忙な日々を送る彼は、HEROsアンバサダーとして社会貢献活動を推進するなど、意外な一面を持っている。

毎年11月の恒例行事になっている「With you Japan Festa」は、参加する子どもたちが夢や希望を持って何かに挑戦するきっかけを与える機会や場所を提供するべく、佐藤選手自身が考案したイベントだ。

このイベントを始めるきっかけとなったのは、2011年3月に起きた東日本大震災であった。

東日本大震災をきっかけに「With you Japan」プロジェクトを立ち上げる

佐藤選手は、2002年から2008年までF1ドライバーとして活躍したのち、2010年からはインディカー・シリーズに参戦。宮城県を震源とする東日本大震災が起きたのは、その1年後のことだった。あまりにも悲惨な状況をテレビ越しに見て、「何か自分にできることはないか」と必死に考えたという。

その思いは、佐藤選手を突き動かし、レース会場で募金活動を実施したり、シーズンの合間を縫って日本に帰国し、被災地を訪問したりするなど積極的に支援活動に取り組んだ。

やがてその思いや行動は、周りのレーシングドライバーやIRL(インディ・レーシング・リーグ:現IndyCar)に波及。こうして周囲の協力を得ながら、悲惨な経験をした被災地の子どもたちに対して長期的に支援をすることを目的にした「With you Japan」プロジェクトは立ち上がった。

被災地の子どもたちが思い切りチャレンジできるイベントを開催

日本に帰国した佐藤選手は、被災直後の地域で思うように外で遊べない多くの子どもたちに何か元気を与えられないかを考え、ツインリンクもてぎや被災地の小学校の体育館を貸し切って、イベントを開催。さらに、津波の被害が大きかった地域の子どもや保護者を、佐藤選手自身が出場するインディジャパンレースに招待するなど、厳しい環境を強いられる住民を励ますイベントを次々と実施した。 

復興支援活動を始めて3年目となる2014年からは、子どもたちに新しいことにチャレンジすることの大切さを伝えるため、「TAKUMA KIDS KART CHALLENGE」を開催。この年は、宮城県の菅生と土砂災害で大きな被害を受けた広島県で、子どもたちが自分の力のみで走り切ることを目的としたイベントを開催した。

2016年には、被災地の子どもたちと都心部の子どもたちの交流イベントとして、カート大会を開催。出場する子どもたちに挑戦する気持ちを持つことの大切さやステップアップを経験してもらうために、3会場での予選会、そしてと鈴鹿での決勝大会を用意するなど、さまざまな工夫を凝らした。

競技を越えて、「With you Japan FESTA」を開催

佐藤選手が8度目の挑戦にしてインディ500で日本人初の優勝を果たした2017年には、これまで続けてきた被災地の子どもたちへの支援から、さらに活動の幅を広げていく。競技の枠を超え、これまで知らなかったスポーツを体験してもらうイベント「With you Japan FESTA」を開催することにした。 

「とにかく未来ある子どもたちにフォーカスを当てて、夢のきっかけづくりを提供したかった」と語る佐藤選手は、「子どもたちには、自分で限界を決めつけずにチャレンジする精神を身に付けられるような体験をしてほしい」という願いを込めてイベントを開催。

このイベントでは、カートだけでなく、スラックラインなど子どもたちが今まで触れたことがないスポーツが体験できるように工夫し、各競技のトップアスリートと一緒に楽しくチャレンジできる環境を提供している。 

すると、イベントに参加する子どもたちが一生懸命にチャレンジしている姿を周りで見た大人たちにも笑顔が溢れ、新たな活力を与えるなど、副次的な効果も出ている様子だ。

このイベントでは、カートだけでなく、スラックラインなど子どもたちが今まで触れたことがないスポーツが体験できるように工夫し、各競技のトップアスリートと一緒に楽しくチャレンジできる環境を提供している。 

すると、イベントに参加する子どもたちが一生懸命にチャレンジしている姿を周りで見た大人たちにも笑顔が溢れ、新たな活力を与えるなど、副次的な効果も出ている様子だ。

「チャレンジする中で順位を意識して、1番を目指すことがとても重要。1番になるため、上達するためにいろんな工夫を試行錯誤する、その過程を経験することで将来チャンスを広げていくときに必ず役立つ」と語る佐藤選手。

佐藤選手も常に1番を目指す現役アスリートとして、自分に言い聞かせている言葉ではないだろうか。世界で活躍するトップレーサー”佐藤琢磨”のチャレンジは、今も多くの子どもたち、大人たちに夢を与えている。社会に貢献し、現役トップアスリートとして活躍し続ける姿に今後も注目していきたい。