2018年11月、阪神タイガースの鳥谷敬選手が、ファンから寄付を受けた靴や文房具を届けるため、東南アジアのミャンマー連邦共和国を訪問した。

この訪問は鳥谷選手が理事をつとめる一般社団法人レッドバードの活動の一環で、レッドバードは「世界中のこどもたちの笑顔を目指して」活動する非営利の一般社団法人だ。

活動のきっかけは、2014年に野球教室を開こうと具らー部やバットを持ってフィリピンを訪れたときに遡る。鳥谷選手は、フィリピンマニラ市北方に位置するスラム街のスモーキーマウンテンのゴミの中ではだしで歩いている子どもたちを見て衝撃をうけた。貧困家庭の子どもたちがゴの中から使えるものや売れるものを探しているのだ。「野球を教える前にまずは靴を送ろう。」そう考えた鳥谷選手は2015年、仲間とともにレッドバードを設立、ファンにむけて靴と文房具の寄付を呼びかけた。

当初10,000足集めることを目標としていたが、開始からわずか3ヶ月で目標を達成。こうして集まった靴は、フィリピン、カンボジア、タイなどを、鳥谷選手自身が直接訪問し、子どもたちに手渡しする形で届けられている。

この活動はHEROs AWARD2017を受賞し、今回はHEROs AWARD WINNERとして、ミャンマーを訪問した。

子どもたちに靴を届けた鳥谷選手(写真左)

ミャンマーはインド、中国、タイ、ラオス、バングラデシュと国境を接する東南アジアの国だが、軍事政権が長く続いたことなどが原因で国の発展が遅れ、農村部では電気、ガス、水道などのインフラは整っておらず、経済的には非常に厳しい生活が続いている。

日本から大量の靴を段ボール箱に詰めて飛行機にのせ、ヤンゴンからトラックに積みかえる作業はすべて鳥谷選手が先頭に立って行った。現役のプロ野球の選手が、自ら現地に足を運ぶ理由は「ファンから託された靴を自分ではこび、現地のこどもに直接渡すことが大切。また、届けた国の生活の様子や、こどもたちの様子を支援してくれた方に報告するため。」と鳥谷選手は語った。

今回は、経済の中心ヤンゴンから南西に250キロほど離れたエイヤワディー地域の農村を訪問した。ヤンゴンから車に揺られること4時間。いよいよ目的の村の学校に到着した。村人たちと子どもたち総出の歓迎を受け、いよいよ靴の贈呈だ。

サイズやデザインをこどもたちと一緒に選びながら、一人ひとりに靴をはかせていくが、靴ひもを結んだことがないため、紐の結び方も教えながらの贈呈は大仕事だ。全員靴が行き渡ると、いよいよスポーツ交流がスタート。今回、HEROsの活動を支援してくれる多くの寄付者からいただいた寄付により寄贈させていただいたブランコやシーソーも大人気。ミャンマー式の徒競走では、TEAM鳥谷と、ミャンマーのこどもたちの国際試合も実現。小さな村は大歓声に包まれた。

普段靴を履かない子どもたちにも大好評でした

いよいよ、鳥谷選手の野球教室が始まった。ミャンマーはサッカーが人気があるのは知っていたが、野球のことを知っている村人が誰ひとりもいないことには驚いた。バットやグローブが必要な野球を楽しむことは途上国ではハードルが高いことを感じた。

そんな野球が受け入れられるか?少し心配しながら、鳥谷選手とスタッフによるキャッチボールが始まった。心配をよそに、ボールがグローブに吸い込まれバスッという音が鳴るたびにこどもたちから歓声があがりった。それでは、と子ども達にボールの投げ方教室が始まった。初めてのキャッチボールというが、なかなか様になっている。うまくいくたびに歓声、失敗しても笑顔の輪がひろがり、野球教室も大盛況となった。

ミャンマーでは、子どもたちも貴重な働き手の一人であり、労働のために学校に通うことができない子どもたちが多くいます。スポーツや遊具は、子どもたちに学校に行くモチベーションをあたえ、児童労働から子どもたちを学校に戻す大切な役目を果たす。

鳥谷選手は「靴を届けるというシンプルな支援がきっかけとなり、子どもたちの将来の可能性を広げることができればいい。」と強調した。

ミャンマーの子どもたちにもすべり台は大人気

インスタグラムで最新情報を随時配信しています。ぜひご覧ください。

日本財団HEROs インスタグラム