アスリートによる社会貢献を促進する日本財団の「HEROs」プロジェクトは9、10日の両日、具体的な活動の一環として「東京雪祭×HEROs FESTA2019」を開催した。東京都渋谷区の代々木公園B地区、イベント広場を舞台に、「HEROsアンバサダー」など活動に賛同するアスリートたちが来場した子供たちとスポーツで交流したり、トークショーでスポーツの楽しさを紹介したり、スポーツをはじめ何事かに挑戦するきっかけとなるよう話しかけた。
この催しのテーマは「On Your Marks~スタートラインに立て~」と掲げられた。「On Your Marks」はいうまでもなく「ヨーイ・ドン」の「ヨーイ」にあたる。スポーツを始めよう、何かを始めようとするきっかけづくりだ。
両日とも秋晴れのいい天気のもと、多くの親子づれ、若者たちが会場を訪れた。
初日は柔道全日本監督の井上康生さん(シドニー五輪金メダリスト)や元プロ野球・阪神の赤星憲広さんらが登場。トークショーでは、井上さんはオリンピック出場の経験や指導者として2020年東京大会に向けた取り組みなどを語った。赤星さんはプロ野球選手としての経験を話し、現役時代から車いすを送り続けている活動のきっかけを披露した。
ボランティアに勇気をもらった
小春日和となった2日目にはハンドボール元日本代表主将の東俊介さん、バドミントンで北京、ロンドン大会に出場した池田信太郎さんや競泳のシドニー大会出場の萩原智子さんたちが出演。スポーツを始めたきっかけや競技生活での体験などを話した。
東さんはHEROsの活動の一環として故郷金沢市にある少年院を訪ねたときの経験を紹介。「HEROsの活動でこれまで得られなかったチャンスをもらって、逆に自分が勉強するきっかけとなった」と話した。
また池田さんは「現役選手時代にボランティアの人から勇気をもらった」と話し、萩原さんは先日のラグビーワールドカップを観戦した際、5歳の息子さんがボランティアのハイタッチで元気づけられて駅までの長い道のりを歩き切ったことを披露。ふたりはともにボランティアの重要性を指摘した。
このフェスタには日本財団ボランティアサポートセンターで研修をうけている企業ボランティア40人が参加、会場では運営やイベントの補助を行った。彼らにとっては池田さんや萩原さんの話はさらに背中を後押ししてくれたに違いない。ちなみに萩原さん自身も東京大会のボランティアに応募、近く研修をうける予定だという。
萩原さんはまた「水ケーション」と呼ぶ、森を守り育て、彼女の水泳人生を育んだ水を大切にする活動を続けている。現役生活を終え、山歩きを始めたことが「水の大切さ」を訴えるきっかけだった。
スポーツを通した交流がきっかけに
会場にはテントのブースとともに、「HEROsスタジアム」と命名されたスポーツ施設が設けられ、集まった子供たちはバスケットボールやサッカー、アルティメットなどに挑戦。シュートやゴールが決まると大きな歓声をあげて走り回った。東さんの指導によるハンドボール教室では教えられた子どもたちが上手にゴールを決めて、拍手を浴びた。
また車いすレース体験や協力企業・明治によるボッチャ体験、さらにボートレース振興会による体力測定では大人たちも楽しそうに挑戦した。体力測定には池田さんも挑戦し、背筋力125キロ、垂直跳び47センチなどの記録を残した。そのほか、長期療養中の子どもたちを支える人材の養成で昨年の「HEROs of the year」に輝いたNPO法人Being ALIVE Japanは「レモネードスタンド」ブースを設け、レモネードを販売、売り上げは小児がん治療研究費支援にあてられる。
何かをするということは、まず一歩を踏み出すことから始まる。「HEROs」の活動も2017年に最初の一歩を踏み出した。いま多くのアスリートの協力を得て社会とつながるスポーツマンシップの輪を広げている。今回のACTIONも、誰かが何かを始めるきっかけになれば、それは素敵なことだ。
コラボした東京雪祭
HEROsがコラボレーションした「東京雪祭」は一般社団法人SNOWBANKが主催し、2019年で9回目を迎えた。代々木公園に福島から155kgの氷柱5本を運び人工降雪機で5tの雪を降らせ、スノーボードのショートコースを作り、そこで競技と体験を行う側ら、骨髄バンク登録と献血事業の普及を推進している。法人代表の荒井DAZE善正さんはプロスノーボーダー。自身が骨髄移植と輸血によって難病を克服したことからこの運動を続けている。
今回、HEROsの目的と合致したことからコラボ・イベントとして開催された。
会場では荒井氏とHEROsアンバサダーの車いすバスケットボール、シドニー大会日本代表主将の根木慎志さん、パラ水泳で日本最多22メダル、5金メダルの河合純一さんと同リオデジャネイロ大会銅メダリストの山田拓朗さんがトークショーに登場。心のバリアフリーの大事さ、その実現のためには障害のある人・ない人が「あたりまえのことをあたりまえとして言えるようにならなければ」と理解を深めていく社会の実現を訴えた。
トークショーには長谷部健渋谷区長も公務の合間を塗って登場、「ちがいをちからに変える街」と目標を掲げる渋谷区のダイバーシティーに関する取り組みなどを紹介した。渋谷区は日本財団と一緒にダイバーシティーとインクルージョンに関する事業を展開している。
「日本財団ブログ『みんながみんなを支える社会』に向けて」より転載