2021年11月19日、HEROsアンバサダーの安藤美姫さんが母校・中京大中京高校で講演を行ないました。前回行なわれた五郎丸歩さんに続き、今年2回目のHEROs LABです。

幼少期から世界に飛び立ち、全日本ジュニア選手権では3連覇。2002年のジュニアグランプリファイナルにおいてはISU公式大会で女性選手として史上初の4回転ジャンプを成功するなど、日本のフィギュアスケート史を語る上で外せない一人です。

母校のスポーツクラス向けに開催された今回のLABから、生徒の質問に対する安藤さんの答えを抜粋してお届けします。

“その場にいること”を褒めてあげる 

Q)試合でメンタルを強く保つにはどうすれば良いですか?

安藤:私は意識的にメンタルを高めようと思ったことはありません。オリンピックでも世界選手権でも小さなローカル試合でも、すべての出場する試合に向けて毎日同じことをし、特別なことはしないよう心がけていました。

メンタルの高めかたは人それぞれですが、私はリラックスしている時にベストパフォーマンスを発揮できるタイプ。そういう意味では、自分の平常心がベストな状態なので、この感覚を覚えることが一番大切だと思っていました。

その感覚を覚えた後、本番の会場で必ずやることがありました。“その会場にいる自分を褒めてあげる” ことです。なぜなら、その会場に行けない人、立てない人がいる中で自分は代表としてその場でパフォーマンスができる。そんな貴重な機会があるだけで十分だと。私はそう思っていました。

行けなかった人たちの分も、頑張ることを意識します。結果だけ求めるよりもリラックスできるし、「ここにいるだけで自分はすごいんだ」という自信にも変わる。こういう考えが“強いメンタル”に繋がるのかなと思います。

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Q)スランプになった時の抜け方、気持ちの切り替え方はありますか?

安藤:実は、スランプとか挫折とか壁に当たったことはありません。自分に起こることは全て、何か意味があると思っています。

私は小学3年生のとき、父を事故で亡くしました。

そのとき、すでに習っていたフィギュアスケートを一度辞めたんです。だけど、一緒に習っていた友達が毎日のように私の家に通って「スケートにいこう!」と誘ってくれたんです。

そのときに出会った先生の笑顔に、私は救われました。先生の笑顔を見たくて、いくつかの習いごとの中からフィギュアスケート一本に絞ったんです。父の急な別れがなかったら、私はフィギュアスケートを続けていませんでした。父の死があったからこそ、自分のフィギュアスケーターとしてのキャリアが確立されたと思っています。

だから、スランプの時も辛い出来事が起きた時も、幸せの時も、全て意味があると思うんです。人間は波があるのが普通だし、ずっと一定の人生は逆につまらないとも思っています。

スランプだからといって人生は終わりではないし、そこでどう踏ん張るかが大事。後々、その時を思い返したときに今に活かされている経験を見つけられたら、そのスランプや挫折は大きな意味があったと言えます。

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人との繋がりは人生の宝

Q)アスリートとして成功するための人としての資質を教えて下さい。

安藤:世間一般では、私はトップアスリートと言われていますが、人間性はどうなのかと言われると……。まだ若輩者だし、成長すべきところはたくさんあります。

そんな立場の私ですが、ひとつ言えるのはアスリートだからこそ会える人がいる、ということ。自分が出会った人たちの影響で人間性が確立されると思うんです。

その点で言うと、中京大中京には感謝しています。もともと違う高校に入ろうと思っていたのですが、中京大中京の関係者が私が4回転ジャンプを飛んだニュースを見てくださって、「ぜひ中京に来てほしい」とお声かけくださったんです。

中京に入ってしんどかったこともたくさんあるし、高校の先生は厳しかったです。でも、ここで色々な常識を身につけることができました。人間関係の大事さも学びました。「高校と大学は勉強も大切だけど、人との繋がりを作ることの方が大事だよ」と先生に教えていただいて、「勉強よりも大切なことがあるんだ」と意識するようになりました。

もちろん、勉強も大事だし今やってるスポーツも大事です。でも、それ以上にここで出会った仲間や先生との繋がりは一生モノなので、みんなにはそれを大事にしてほしいです。

Q)現役時代、セカンドキャリアについてどのように考えていましたか?

安藤:日本には、セカンドキャリアをしっかりと考えているアスリートが少ないイメージがあります。私がアメリカに暮らしていた頃、周りの友達はみんなセカンドキャリアの話をしていたんですよ。19歳のときの話です。

アスリートはその時に戦っている自分に集中して結果を残さなければいけない、という責任感があります。だからこそ、“今の自分をどう強くするか” “どう一回り成長した自分になるか” というように日々の成長だけを考えているものと思ってました。

でも、いつまで現役でいられるか分からない。大怪我をするかもしれないし、それこそ事故に遭うかもしれない。だから、今のうちに自分がどうセカンドキャリアを生きるかを考えなければいけないと、アメリカでの生活で思いました。


みんなはどうなりたいですか?

ずっと競技の中で生きていきたいのか、そうではないのか。この答えからセカンドキャリアは異なってきます。

セカンドキャリアを今のうちに考えておくと、「現役のうちにこの期間でこれをやろう」と、大きな目標やそこまでのプロセスが見えてきます。

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Q)在校生に向けて一言、メッセージをお願いします。

安藤:いろいろな仲間に出会えたことに、感謝してください。残り少ない高校生活でも、先生や仲間から刺激を受けて、今後に繋がる何かが生まれることはあります。これからの1日1日の過ごし方で、人生が変わっていきます。

悔いのない高校生活を過ごしてほしいです。こうやって過ごせる時間は幸せだったと思うし、あの時の厳しい先生からの言葉や教えがあったから今の自分がいるんだと、私は大人になって気づきました。先生から言われた言葉を、大切にしてもらいたいです。

中京大中京に入学して皆さんとこういう時間を共有できることを大切にし、感謝の気持ちを忘れないでください。

私もこうやってHEROsの企画で中京に来て皆さんと話していますが、フィギュアスケートをやっていたからHEROsに出会って、ここに来ています。皆さんも将来、HEROsの仲間になって欲しいです。スポーツは色々な人たちにパワーを与えらえる。それを忘れずに輝いて欲しいなと思います。

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