みんなの「好き」をSDGsに結びつける『オタ活でSDGs』プロジェクトを推進するアーティスト・WHITE JAMのNIKKI氏。持続可能な世界の新たな道標となる活動は、音楽業界のみならず多方面の注目を集めています。

同じくSDGsに取り組むのが、弱冠16歳でありながら渋谷のゴミ拾いイベントを主催するスノーボード・アルペン競技の星更沙選手、日頃からSDGsに取り組む様子をSNSで発信している2018年平昌、2022年北京五輪スノーボード・ハーフパイプ日本代表の戸塚優斗選手。

若い世代に向けて、自分の「好き」の見つけ方、日頃からできるSDGsのススメなどを説きました。

「好き」をSDGsにつなげて

ーみなさんそれぞれがSDGsに興味を持ったきっかけ、今の活動に至った経緯を教えてください。

NIKKI氏(以下、NIKKI):実は、2020年までSDGsという言葉を知らなかったんです。コロナ禍で時間を有意義に使いたいと思い、何か勉強できることはないかと調べたところ、SDGsという言葉が出てきました。

もともとお洋服が好きで、ネットで検索する時にいつも「サステナブル」という言葉を目にしていました。それが繋がってSDGsに興味を持つようになりました。

コロナ禍って、音楽業界にとってすごく活動しづらい時期だったんです。たくさんのアーティストが解散したり、ライブできる場所がなくなっていったんですよね。業界の人間だけじゃなくて、応援してくれているファンの人たちも一緒に苦しんでいるんだと気づきました。

この3年くらいで、たくさんの愛と時間をかけて応援してきた「推し」にいきなり会えなくなった。辛い思いをした人がすごく増えたと思うんです。そういう人たちに、エンタメの新しい希望を見つけてほしくて立ち上げたのが『オタ活でSDGs』プロジェクトでした。

活動内容は、ライブ会場で着なくなったライブTシャツなどを回収したり、SDGsを掲げている企業のみなさんとコラボ商品を作ったり。ファンのみんなが、オタ活を通して楽しく社会貢献できるように活動しています。

星更沙氏(以下、星):私がスノーボードを始めたばかりの頃、2019年に発生した台風19号の影響で家が危険な状態になったのが、最初のきっかけです。それと同じ時期に、スノーボードの練習をしに山へ行って「なぜこんなに雪が少ないのか」と思うようになりました。

自分の中でいろいろな問題意識が芽生えて、環境問題に関心を持つようになりました。それからは自分なりに調べてみようと思って、スペイン大使や大学教授など、大人のところに環境問題について聞きに行ったんです。そこで「ゴミが増えると雪が降らない環境になる」と学びました。

私が代表をしている『SDGs KIDS MOVEMENT』という団体は、子どもでもわかる言葉で行動を促したかったのが設立のきっかけです。今は子どもたちが大人に対して、環境問題について働きかける取り組みをしています。

2022年5月29日には、ゴミゼロの日(5月30日)に合わせて「530 SHIBUYA CITY CLEANUP」という渋谷のゴミ拾いイベントを開催しました。たくさんの人に集まってもらって、活動の広がりを実感しましたね。

戸塚優斗氏(以下、戸塚):僕はワールドカップや世界ツアーで海外を転々としているのですが、各地の雪が本当に少なくなったと思いました。このままだとスノーボードという競技自体がなくなってしまう。そんな危機を感じました。そこで(星)更沙ちゃんの活動を知り、一緒に取り組みたいと思ったんです。

渋谷のゴミ拾いイベントに参加した時、ふだん何気なく通っている道にゴミが散乱しているのを見てしまったんですよね。自分たちが生活している環境がどれだけ大切なのか、分かった気がします。そこから環境問題に取り組んでいこうと思いました。今はペットボトルを水筒に変えたり、小さなことから始めています。

いかに自分の「好き」を発見するのか

ーSDGsの活動と「好き」を両立させるのに心がけていることはなんでしょうか?

NIKKI:SDGsと言われても難しく感じるし、何をすればいいのかわからない人がほとんどだと思います。ファンのみんなに、大好きなオタ活を通じて環境問題や社会問題に取り組んでもらえるようにすることを心がけていますね。

そのためにはまず、身近にある問題から取り組もうと思いました。着なくなったライブTシャツやCDを回収して、何か別のグッズにリユース・リサイクルできないかを考えています。とくにCDは特典がついて売られていることが多いので、1人で何枚も買って廃棄することが多いんですよね。

それにしても、二人ともまだ若いのに行動力や問題意識がすごいですよね。私が高校生のころはカラオケしか行ってなかったです(笑)。そういった意識は、どうして生まれるのですか?

星:スノーボードが好きだからですかね……。どうして雪がなくなってしまうのか、本当に知りたかったので。

戸塚:僕もスノーボードが好きだからですね。新雪が降ったあとのスキー場はフカフカしていて滑るのが楽しいし、リフレッシュできるんです。雪が降らないと、それもなくなってしまいます。

ーそもそも、その「好き」を若い世代の人たちが見つけるために大事なことはなんでしょうか?

戸塚:自分にとって楽しい時間を意識することかなと思います。僕は子どもの頃、家に飾ってあるスノーボードの写真を見て興味を持ちました。親に山へ連れて行ってもらって、キャンプで出会った友だちと仲良くなり、一緒に楽しい時間を過ごすうちに本格的にスノーボードを始めることになりました。

僕にとっては仲間と一緒に活動することや共有することが大切で、互いに刺激し合って「好き」に繋がっていると感じます。

星:私もスノーボードを始めたきっかけはYouTubeの動画で見て、単純に滑る姿がかっこいいなと思ったからです。軽い気持ちで始めました。SDGsについて考えるようになったことで、深い関心を抱き、そこから本格的にスノーボードにも取り組むようになりました。

ちょっと興味を持ったことが、次第に好きなこと、やりたいことになったんじゃないかと思います。なので、あまり特定の目標などは決めず、自然体でいることを心がけています。

NIKKI:そうですよね。興味を持つことが「好き」を見つけることにつながる。私が学生の頃って、みんなまだスマホを持っていなかったので、好きなものを見つけるのがすごく簡単だったんですよ。

テレビや雑誌に出た人や、クラスでみんなの話題になったものに興味を持って好きになっていたんです。今はみんな当たり前に、スマホでTikTokやYouTubeを見るじゃないですか。便利な一方で、興味が分散していって「結局、自分は何が好きなんだろうか」となると思います。

そういうときは、自分にフォーカスするといいですよね。コンビニに行った時、つい手に取るもの、自分の部屋を見渡したときにやたらと多い色、そういうところから気づいていけると思います。

自分にフォーカスしていくと、意外と興味を持ってるものに囲まれてたりするんですよね。こうなると「好き」を見つけるゴールはすぐそこだと思います。その先に夢や歩みたいキャリアがあったりするじゃないですか。これは人生の大発見だと思うんです。まずは自分に興味を持つことから始めるのが、いちばんの近道だなと。

若い世代ができる身近なSDGs

ー若い世代の人たちができるSDGsの取り組みは何があるでしょうか。

星:些細なことから始めるのが良いと思います。ペットボトルの代わりにマイボトルを使うようにしたり、コンビニで配られる割り箸やプラスチックスプーンをマイ箸やマイスプーンで代用したり。そこから地球が変わっていくんじゃないかと。

戸塚:更沙ちゃんが言ったように、些細なことから始めるのが若い世代の子たちにとっても取り組みやすいと思います。ゴミ拾いなどのボランティア活動以外でも、節電やリサイクルとかも大事ですよね。

僕の場合は、母がそういうことをとても意識していて、小さい頃から注意されたりしました。使っていないトイレの電気を点けっぱなしだと、「なんで消さないの!?」って叱られたり(笑)。

星:私も(戸塚)優斗くんが言っていたように、どうしても電気を点けっぱなしにしたり、寝る時にエアコンを切らなかったりすることが多くて、お母さんに注意されることがありましたね(笑)。

NIKKI:ご家族の意識づけって本当に大事ですよね。節電したり、自宅の家具を大切に使用したりすることで、製品を作る側も「長く使ってもらいたい」というふうに意識が変わっていくんじゃないかと。これが広がっていけば、SDGsにつながっていくと思います。

そういったオタ活をしている子どもたちは、マイボトルやバッグなど日常的に使うアイテムを推しカラーや推しデザインにすることで、SDGsに楽しく取り組めますよね。

ーこれまでSDGsの活動をされている中で、うまくいかなかったり、苦労したことはありますか?

NIKKI:SDGsに取り組んでいる企業さんだったとしても、ビジネスでは利益をあげることが重要になってしまうので、SDGs関連の商品は高くなってしまいますよね。リサイクルにかかるコストを企業さん側で負担されることも大きな要因だと感じています。

商品が高いと、購入をためらう方がほとんどだと思います。だけど現状では値段を高くしなければ継続できない。私自身もそのジレンマに直面していて、今後も続く大きな課題だと思います。

SDGsに興味を持つことは「未来への希望」となる

ー最後にお三方がこれから重点的に取り組みたいことを教えてください。

NIKKI:今年の目標としては、私はできるだけ多くのCDを回収したいです。以前より回収業者が増えたのですが、まだ業者さんと提携してできるまでにはなっていません。環境に良いものに寄り添う、リサイクルCDを作れるようにしたいです。

星:ゴミ拾いを継続して頑張っていきたいと思います。大事なのは楽しくやることですね。みんなで楽しくやらないと、誰もやらなくなっちゃうと思います。いろんな企画を立てて、楽しくゴミ拾いをできたらいいなと思っています。

戸塚:僕は本当に些細なことしかできないんですけど、更沙ちゃんがやってる活動を広めていきたいです。ゴミ拾いなどの活動を応援して、それを広めていくのが、今の僕にできることかなと思います。

NIKKIさんみたいな先輩がいるのはとても心強いです。たくさんのファンがいる人が直接語りかけてくれるのは、本当にすごいことだと思います。こういう先輩がいるから僕たちも頑張れるんじゃないかなと。

NIKKI:私も今日こうやって話してみて、未来への希望があるなと勇気づけられました。大人が頑張るしかないと思っていたけど、星さんや戸塚さんのような若い世代の人たちが頑張ってくれたら、大人もやる気が出ると思います。

正直、大人よりも若い世代の方々の方が知識が多いんですよ。今は学校の授業でSDGsについて学んでいると思うし、この前は小学6年生の子がメッセージを送ってくれたおかげで、私たちのプロジェクトのホームページも改善できました。

二人と話してみて、すごく楽しかったです。お二人の活動を応援したいですし、私もやる気が出ました。ありがとうございました。