2022年2月6日(日)、講道館国際柔道センター(東京都文京区)にて、『HEROs DREAM』の第2弾「柔道日本代表 ウルフ・アロン選手とのプライベートレッスン」が開催されました。
『HEROs DREAM』とは、アスリートがファンに対して「特別な体験」となるイベントを企画し、ファンは参加抽選券への申込を通じて寄付を行なう、アスリートとファンが連動して実現する社会貢献の企画です。寄付金は、アスリートによる社会貢献の取り組みや困難に直面する子どもの支援など、社会課題解決のために活用されます。
今回のイベントでは、10代から30代の男女、柔道初心者から柔道経験者まで、6名の当選者が参加。ウルフ選手から実際に技を学べるプライベートレッスンに加えて、参加者との座談会が開催されました。
相手の反応を見ながら、言葉を選ぶ
まずは、柔道着に着替えた参加者が会場に到着。ウォーミングアップをしながら、緊張した面持ちでウルフ選手の到着を待ちます。参加者の中には、柔道着を着るのが初めての方も。経験者の参加者の方が、帯の締め方を教えてあげていました。
ウルフ選手が登場すると、まずは屈伸やアキレス腱伸ばしといった基本的な準備体操からスタート。そして、オリンピック当日にも実践したというサーキットトレーニングへ。フットワークから、バーピー、腹筋、腕立て伏せ、足上げなど、参加者の息も上がる盛りだくさんの内容でした。いきなりエンジン全開です。
まずは柔道の基本動作である「受け身」から始めようという流れの中、ウルフ選手は「受け身、やりたい? 面白くないよね(笑)」と一言。「せっかくの機会なんだから、技を教えます!!」と東京オリンピックで金メダルを決めた得意技・大内刈(おおうちがり)を披露してくださいました。投げた振動で畳が揺れ、目の前で見る力強さに皆が驚きと興奮を隠せない様子でした。
その後は、足の動きや手の動きにおけるポイントをそれぞれ伝授。参加者は二人一組に分かれて、実際の動きに挑戦します。
ウルフ選手は一人ひとりとしっかり向き合い、それぞれのレベルに合った丁寧な指導を心がけておりました。少しでも理解しやすいようアドバイスする姿が印象的でした。
参加者も、ウルフ選手の言葉ひとつひとつを聞き漏らすまいと熱心に耳を傾けます。1時間という限られた時間で最大限に自身の経験を伝えようとするウルフ選手と、必死で吸収する参加者たち。それぞれのレベルは違えど、少しでも大内刈を習得できるようにと奮闘していました。
最初は緊張していた参加者の顔にも、ウルフ選手にも徐々に笑顔が見えはじめました。
あっという間に時間は過ぎ去り、“ウルフ選手の技を受ける”という貴重な体験でレッスンは終了。
最後に、ウルフ選手は「今日僕が教えたことが全てではないので、これからに生かしてほしいです。初心者の方は柔道を始めてくれると嬉しいです。お互いに頑張っていきましょう!」と参加者にエールを送りました。
大切なのは、「何が正しいのか」を考えていくこと
レッスン終了後の座談会では、まずウルフ選手から一言。
「今日は失敗も多かったと思いますが、柔道以外のことでもたくさん失敗しながら、何が正しいのかを考えながら取り組んでほしいです。20年のブランクがあった方もいらっしゃいましたが、柔道は良い有酸素運動になりますし、生涯スポーツとして取り組んでもらえると嬉しいです」
その後は、参加者からの質問タイムへ。「調子が良くないときのトレーニングはどのようにしていますか?」と聞かれると、「僕も負ける試合のほうが多いです。練習のなかで足りなかったことを見つけ、同じ失敗をしないようにする。普段の練習から何が正しいのかを考えながらやることが重要です。自分の柔道のスタイルに合ったトレーニングをするようにしています。筋肉をいくらつけたとしても、柔道に転換できないと意味がありません」と自らの経験を交えて答えられていました。
試合になると緊張して実力が発揮できないと話す参加者へは、「目的や目標を持つことが大事です。『オリンピックで勝つ』という目標があったから、心が折れることはあまりありませんでした。目的意識を持って、無理せず、自分がやってきたことを振り返りながら進んでいって欲しいです」と目標に向かって自分なりに努力していく大切さを語っていました。
最後に、「人それぞれ成長の度合いも、得意なことも違います。言われたことを鵜呑みにせず、何が自分に合っているのかを探すことが大事です。自分なりの柔道や生活を作り上げてほしいです」と話し、座談会が終了しました。
そして、ウルフ選手の直筆サインが入った参加認定証が本人より渡されました。記念撮影では、なんと東京オリンピックでの金メダルが登場。参加者にも手渡され、首に下げての2ショット撮影も行なわれました。
参加者からは、「せっかくウルフ選手に教えてもらったので、新しい技を(今後の自分の柔道に)取り入れていきたい」「ウルフ選手に会いたいと思って応募しました。貴重な経験ができたので、今後の生活に生かしていきたいです」など、今後への励みになったという声が多く挙がりました。
「教えることを決めてくるのではなく、臨機応変にやろうと思っていました。みんな熱心で、教え甲斐がありました。これまでこういった活動にあまり取り組んでこなかったのですが、改めて『柔道を通じて人のためになりたい』と思いました。現役選手としては、パリオリンピックに向けて頑張っていきたいです。その中でも時間を見つけて、こういった活動をしていきたいですね。
イベント終了後にウルフ選手はこう語りました。第一線で選手として高みを目指しながらも、競技外の活動に注力していくという決意が印象的でした。
ウルフ選手にとっても、参加者にとっても、これから進んでいくきっかけとなった本イベント。短い時間でしたが一人ひとりの思い出に深く刻まれ、新たなスタートとなった一日でした。