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2020/10/12

ラグビー元日本代表・五郎丸歩選手が中高生を激励! 伝えたかった2つのメッセージとは?

ラグビー元日本代表・五郎丸歩選手が中高生を激励! 伝えたかった2つのメッセージとは?

著者 : 瀬川泰祐(HEROs公式スポーツライター)

2020年819日、ジャパンラグビートップリーグ・ヤマハ発動機ジュビロに所属する五郎丸歩選手は、日本財団が企画・運営を手掛ける「HEROs LAB」に登場し、約2時間にわたって中高生らとの交流を楽しんだ。

HEROs LAB」とは、トップアスリートたちが育んできた価値感や考え方を未来ある若者に伝え、社会を切り開く人材を育てていこうという取り組み。中高生は、目標の立て方やモチベーションの保ち方、覚悟の決め方、感謝の気持ちの大切さなどをトップアスリートから直接学ぶことができるという、これまでにないエキサイティングなオンラインスクールだ。

五郎丸選手が感じる現代社会の課題

五郎丸選手は3歳のころからラグビーをはじめると、佐賀工業高校時代には全国高等学校ラグビーフットボール大会に3年連続で出場するなど、若い頃からその才能を開花させた。高校卒業後に進学した早稲田大学在学時には日本代表に選出され、20084月にはトップリーグのヤマハ発動機ジュビロにプロ契約で入団を果たす。

「五郎丸」の名が広く知られるようになったのは、2015年にイングランドで開催されたラグビーワールドカップだ。五郎丸選手をはじめとする日本代表は、大会初戦で世界屈指の強豪・南アフリカを相手に劇的な逆転勝ちを納めて世界中を驚かせると、その後もドラマチックな試合を重ね、日本国民を熱狂の渦に巻き込んだ。そのなかでも獅子奮迅の活躍をみせたのが五郎丸選手だった。グループリーグ4試合に出場し合計58得点を記録するなどして、大会のベスト・フィフティーンにも選出された。その実力が認められ、大会終了後には、日本のラグビー界では厳しいとされてきた「海外挑戦」を果たしたパイオニア的な存在でもある。

そんな五郎丸選手が、現代社会を生きている中で感じている課題の一つが、「人と人の繋がりが軽視されはじめていること」だった。「支え合って生きていけば、喜びも悲しみも共有できる。みんなで何かを達成したときの喜びは、1人だけのものよりもはるかに大きい。」というこれまでラグビーという競技を通じて育まれてきた思いは、彼を社会貢献活動にまで駆り立てた。自然災害などの有事には寄付行為を行い、時間が許せば被災地に出向いて支援を行いながら、人と人との絆を確かめ合ってきた。

盛り上がった五郎丸選手へのお悩み相談

この日のイベントには、高校生を中心に180名もの若者が参加。五郎丸選手は、「本当はチャレンジしたいけど、なかなか一歩が踏み出せない」「過去に引きずられてネガティブになってしまう」といった悩みを抱える中高生と感情を共有しながら活発にコミュニケーションを図った。

イベントの冒頭では、五郎丸選手自身が若かりし頃の話を紹介。小学生のときにラグビーではなくサッカーに取り組んだ時期があったことや、ご自身のお兄さんをライバル視していた当時の心境などを交えながら、どのように現在の自分が存在しているのかを伝えた。すると、中高生たちは、堰を切ったように質問や悩みを語り出す。それらに対して五郎丸選手は、自身の実体験を織り交ぜながら、1つ1つ丁寧に答え、アドバイスやエールを送っていった。

そのやり取りの中で、五郎丸選手は、今までに苦しかったことや迷ってきたことも赤裸々に告白。その中で語られたことの1つに、海外挑戦にまつわるエピソードがあった。日本のラグビー界では海外に挑戦することは難しいとされてきたため、海外挑戦を目指してプレーしてこなかったことには悔いがあると話した五郎丸選手。実際、海外移籍の話しを持ちかけられた当初は、すぐには決断を下せなかったそうだ。しばらく思い悩み、ある先輩に相談を持ちかけたところ「人生の決断をするときは苦しい方を選んだ方が良い」とアドバイスを受け、海外挑戦の決断に至った。しかし現地では言葉の壁や文化の違いに苦しんだ。その影響はプレー面にも及んだ。出場機会を得られず苦しんでいたが、一歩グラウンドを離れればラグビー以外の人生を多いに楽しんでいる人たちがいることに大きな影響を受けた。この体験を通じて、参加した人たちに「一歩勇気を踏み出す大切さ」や「悩むことは決して悪ではない」と中高生に対して熱いエールを贈った。

イベントの終盤には、五郎丸選手から「思っていることや感じていることを行動に移すことの大切さ」や「毎日コツコツ続けることの重要性」が伝えられ、そのまま「HEROsチャレンジ」へ突入。「HEROsチャレンジ」とは、トップアスリートが与えたお題に対して、参加者か自らアクションを起こしていこうというもの。五郎丸選手から、「今日から2週間、毎日やることを宣言してほしい」という宿題に、参加者全員は「筋トレを毎日30分行う」「1日1回は必ず笑顔」「ラジオ体操に毎日取り組む」など、オリジナリティ溢れた行動を行うことを宣言した。

五郎丸選手が中高生に贈った2つのメッセージ

そしてイベントの最後には、五郎丸選手から参加者に対して2つのメッセージが贈られた。

一つ目は「今をしっかり生きなさい」ということ。新型コロナウイルスの影響を受けて、未来の夢や目標を見失いそうな現状にも、「今」を大切に生きることで未来を切り開いていってほしいという力強いメッセージが込められた。そして二つ目は「人から評価される成功と、自分の評価する成功は違う」ということ。周囲の評価と自分の評価は相違していることがあり、周りの評価を気にして生き辛さを感じるのではなく、自分の気持ちを大切にしてほしいと語った。すると悩みや不安を抱えた中高生たちは何度も頷き、五郎丸選手のメッセージに込められた意味を自分なりに感じ取っていた。

こうして開始から2時間以上経過したところで、イベントはエンディングを迎えると、画面上のチャットコーナーには、参加した人たちからの感謝のメッセージで溢れた。五郎丸選手も悩みや不安を抱えながらも前を前を向く若者たちに、何か刺激を受けたような表情を浮かべていたのが印象的だった。五郎丸選手は、2018年よりHEROsアンバサダーに就任し、「アスリートの社会貢献活動を促し、様々な社会問題を解決する動きを加速させ、ソーシャルイノベーションの輪を広げていく」活動を行なっている。五郎丸選手の思いが、これからどのように広がりを見せていくのか。これからの活動にも注目してほしい。

中高生の悩みに五郎丸選手はどう答えた?

(質問)

「本当はやりたいことがあるのですが、その道が正しいのかがわからないため、一歩踏み出す勇気が持てないことが悩みです。」

(回答:五郎丸選手)

「まずチャレンジは早ければ早い方が良いです。なぜなら、年齢を重ねれば守らなければならないものが増えて、今より一歩を踏み出すハードルが更に上がるから。若いうちは失敗してもやり直しができます。だから守らなければならないものが少ない今のうちに、どんどんチャレンジしてもらいたい。いま進もうとしている道が正しいかどうかは、やってみなければわかりません。私も小学生の時にサッカーをやっていたが、それがラグビーの世界で武器になった。真剣にやっていれば、進む道が変わっても、それが武器になることもあるということ。やりたいものが見つかったら、真剣に取り組んでみてください」。


 (質問)

「僕は高校3年生で、1年生のときから準備をしてきましたが、期間が長いため、どうしてもモチベーションが続かないことがありました。五郎丸さんはどのようにしてモチベーションを保っていますか。」

(回答:五郎丸選手)

「ラグビーを例に挙げるなら、2015年のW杯に関しては4年前から準備をする必要がありました。さすがに4年後のことを明確に想像するのは難しかったのですが、 “今”自分に何ができるかを常に考えて行動していました。テストの勉強や受験勉強も同じだと思いますが、日々の積み上げでしか、目標は達成できません。そう考えると、“今”できることにフォーカスを当て続ければ、モチベーションは自然と付いてくるのではないかと思います。」


 (質問)

「わたしは剣道で上を目指して練習しているが、なかなか結果が出ない。その影響で、更に悪い方向に思考が行ってしまう。どのように対処していけば良いですか。」

(回答:五郎丸選手)

「まず、なぜスランプに陥っているのか、自分自身のことを理解する必要があります。もしかしたら、“スランプ”という言葉や感覚に逃げてしまっているだけかもしれません。たとえば、毎日の日記を細かく付けてみて、調子が悪いときや結果が出ないときの自分の行動を知ることから始めてみては? スランプという言葉や感覚に逃げるのではなく、解決するために必要な行動を取ることが大切です。」

 

(質問)

「わたしは海外への留学を検討しています。海外の人とのコミュニケーションに関することや、英語にまつわる体験を、海外経験のある五郎丸さんに聞きたいです。」 

(回答:五郎丸選手)

「まず、英語に関しては絶対に勉強をしておいた方が良いです。わたしも言語の部分で大変苦労したので。その上で、言葉が通じないとしても、コミュニケーションを取る相手は人間。それは、海外であろうと日本であろうと関係ない。仮に英語が話せるようになったとしても、一番大切なのは人間性だと思います。」


HEROs LABは、今後も中学生、高校生に向けたオンラインイベントを実施予定だ。もしHEROs LABに参加したいと感じた中高生やその保護者の方がいたら、HEROs LABのページで今後の予定や申し込み方法をチェックしてみてほしい。

取材・文:瀬川泰祐(HEROs公式スポーツライター)